SSブログ

九色鹿伝説 [shamanara]

戸津圭之介個展「鎮魂の譜」
河馬さんの次に戸津氏を虜にしたのは「今昔物語」に登場する動物たちでした。
イソップ物語の大和版、題材をひもとくと多数の動物の寓話にめぐりあえるという。
今昔物語の仏教説話には誹謗と冒涜に満ちたこの今の日本にいにしえの物語が必要なことを教えてくれた。
なぜ日本ではイソップ物語をコドモたちに教え今昔物語を伝えないの不思議です。
鹿さんに逢う。

九色鹿.jpg
ドキドキの対面。
黒々とした瞳に放つ光、魂が持っていかれます。

今昔物語 巻第五天竺 十八話
「美しい毛の色をした鹿が河で人を助けた話」あらすじ

九色鹿とカラス.jpg 
今は昔、ある深い山の中に美しい毛の色と白い角を持った鹿が、カラスと仲良く暮らしていました。
流される男.jpg
あるとき近くの大きな河の方から「たすけて〜」と男の叫び声が聞こえてきました。
助ける.jpg
急いで行ってみると、その男は木の枝につかまりながら急流を流され今にも溺れそうでした。
それを見て鹿は自分の危険も顧みず河に飛び込み男を助けて岸にたどり着きました。
約束の時.jpg
鹿に助けられた男は「本当に有難う、なんとお礼をしたらいいのだろう」と言いました。
鹿は「お礼などはいらない、ただ、自分がこの山に住んでいることは、何があっても人に喋ってはいけない、必ずこのことはだけは守っておくれ。体の色がとても美しく角も白く珍しい、人がもしこのことを知れば必ず自分を殺しに来るだろう。このことだけはたのんだぞ」
約束.jpg
男は「必ず守ります。絶対に口外いたしません」
と約束して里に帰って行きました。
王王妃男.jpg
しばらく時がたったある日、その国の王妃は夢の中で、大変美しい身体の色をした世にも珍しい大きな鹿の夢をみました。
その毛皮や白い角が欲しくてたまらなくなり、王に捕らえるように頼みました。
王は国中にこのような鹿がどこにいるのか知らせたものには沢山の賞金を与えるというおふれを出しました。
このことを知った、あの鹿に助けられた男は貧欲に目がくらみ鹿の住む居場所を教えてしまいました。
王.jpg
王は狩人をたくさん引き連れてこの男に案内させて、その山に向かいました。
鹿はこのことを全く知らず深く寝入っていました。
カラス.jpg
木の上からこの様子を見ていた友達のカラスは大変驚いて鹿のところへ行き急を告げました。
九色鹿a.jpg 
しかし、鹿は少しも驚かず、狩人を引き連れた王の前に歩み出てきました。
鹿は「自分は美しい毛の色と珍しい白い角を持っているため人に知れれば必ず狩りに来るだろうから、この深い山に隠れ棲んでいたのだ。王はどうしてこの場所を知ったのか」
と聞いたところ、王は「この顔に痣のある男の案内によってここまで来たのだ」と言いました。
鹿はこの男を見ると確かに以前自分が河で助けた男でした。
鹿はこの男に向かって「お前の命を助けたときあれほど喜んで人に居場所は教えないと約束したのにここを教えてしまうとは何事か、なんという恩知らずだ」と言って涙を流し悲しみました。
男は返す言葉もありませんでした。
九色鹿b.jpg
鹿の気高さと堂々とした態度からすべてを悟った王は「これからは鹿を殺してはいけない」と命じて狩人たちを連れて元の国に引き返しました。
鹿も喜んで深い山に中に還って行きました。 
九色鹿全景.jpg
その後、この国は五穀豊穣となり貧しい人もなく大いに栄えたというお話です。
しかしながら恩を忘れるのは人間で、獣は人を助けるということは今も昔も変わりません。

参考文献
新 日本古典文学大系 33 今昔物語ー今野 達 校注 岩波書店 1999発行
(以上作品の壁面に貼られていた全文です)
今回の「鎮魂の譜」へ辿りついたのは東日本大震災が大きく関与しているとのことでした。
戸津先生の想いは他の作品にも溢れ出て胸が苦しくなる作品でした。
御歳、75歳で今昔物語の中に説話を通して日本の心を作品として残さなければならないと感じたのではないでしょうか。
鹿さんのお話は読んでいて胸を打たれましたので全文をそのまま掲載させて頂きました。
2013116戸津展案内.jpg

nice!(0)  コメント(0)  トラックバック(0) 
共通テーマ:音楽

この広告は前回の更新から一定期間経過したブログに表示されています。更新すると自動で解除されます。